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アスファルトに照り返した太陽光線。

その熱気に咽そうになりながら、ペダルを踏み込む。

自転車の荷台には大きな茶色の鞄を結び付けてある。

高校生・・・・・・?

そんな風には見えない。

二十歳前後だろうか。

黒いTシャツに黒いズボン。

この暑い日に、真っ黒だ。

彼は何処へ行くのだろう。



遠くから女子高生が怠惰そうに俯いて歩いて来る。

今時珍しい、スカートはキチンと膝まである。

服装だって模範的で違反は一つも無い。

髪の毛も真っ黒で、本当に吸い込まれそうだ。

「亜里守。」

全身真っ黒な服装に身を包んだ男が、その女子高生の名を呼ぶ。

「ん。」

俯いていた顔をすっと上げ、目を細めて相手を確認している。

相当眼が悪いのだろう。

やっとピントが合った所で、名前を呼び返す。

「のぶくんだ。」

顔立ちと服装とは、似つかわしくない名前が出てきた。

少女がおっとりとした口調で呼んだせいかもしれない。

「前見て歩け。事故るぞ。」

馬鹿にしたような言い方。

きっと少女は怒ってるだろう。

「えへへ、大丈夫だよ。頭のてっぺんにも眼、ついてるし。」

・・・・・・天然なのかもしれない。

それよりも女子高生には見えない。感じない。

まだ小学生レベルの思考だ。

「暑いね、のぶくん。暑苦しいよ、服。」

「ほっとけ。これしか服、無かったぞ。」

「洗濯してなかったね、昨日。ごめんなさい。」

少女はあまり反省してる様では無い。

男も別に怒っている様でも無いし、咎め様ともしない。

「亜里守、立ち話も何だ。早く帰ってエアコン全開だな。」

少女は、そうしよう、と張り切って走り始めた。

汗を掻いたせいだろうか。

少女の制服が透けて、キャミソールとブラジャーの紐のラインが浮かんでいた。

男はバツが悪そうに目を逸らして、遠くまで真っ青な空を見上げた。
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