数名で作る創作サイトです。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 亜里守と居ると緊張する。 側に居るだけで、恋愛対象として意識した。 でも、絶対愛してはいけない相手だって事も認識していた。 今の生活を失いたくない、ただそれだけ。 「あ、雨。」 亜里守がポツリと呟いた。 確かに雨音が聞こえる。 アスファルトに打ち付ける音、水溜りを車が跳ねる音。 「なんかさ、鬱だね。」 「え?」 唐突に亜里守から出た言葉は意外だった。 鬱・・・・・・。 「そうか?雨は好きだけどな。」 同じ部屋で、同じ様に横になって、同じ様に読書をしている。 亜里守は無類の読書家だ。 暇さえあればいつでも、本を読んでいる。 そんな横顔や、後ろ姿、集中していて文字以外何も見えてない瞳。 どれも魅力的だ。 ふとこちらに目を向ける。慌てて目を逸らす。 ただの家族。 そう、家族の枠を越えてはいけない。 誰にも気付かれてはいけない気持ち。 ずっと隠し続ける。 PR
アスファルトに照り返した太陽光線。
その熱気に咽そうになりながら、ペダルを踏み込む。 自転車の荷台には大きな茶色の鞄を結び付けてある。 高校生・・・・・・? そんな風には見えない。 二十歳前後だろうか。 黒いTシャツに黒いズボン。 この暑い日に、真っ黒だ。 彼は何処へ行くのだろう。 遠くから女子高生が怠惰そうに俯いて歩いて来る。 今時珍しい、スカートはキチンと膝まである。 服装だって模範的で違反は一つも無い。 髪の毛も真っ黒で、本当に吸い込まれそうだ。 「亜里守。」 全身真っ黒な服装に身を包んだ男が、その女子高生の名を呼ぶ。 「ん。」 俯いていた顔をすっと上げ、目を細めて相手を確認している。 相当眼が悪いのだろう。 やっとピントが合った所で、名前を呼び返す。 「のぶくんだ。」 顔立ちと服装とは、似つかわしくない名前が出てきた。 少女がおっとりとした口調で呼んだせいかもしれない。 「前見て歩け。事故るぞ。」 馬鹿にしたような言い方。 きっと少女は怒ってるだろう。 「えへへ、大丈夫だよ。頭のてっぺんにも眼、ついてるし。」 ・・・・・・天然なのかもしれない。 それよりも女子高生には見えない。感じない。 まだ小学生レベルの思考だ。 「暑いね、のぶくん。暑苦しいよ、服。」 「ほっとけ。これしか服、無かったぞ。」 「洗濯してなかったね、昨日。ごめんなさい。」 少女はあまり反省してる様では無い。 男も別に怒っている様でも無いし、咎め様ともしない。 「亜里守、立ち話も何だ。早く帰ってエアコン全開だな。」 少女は、そうしよう、と張り切って走り始めた。 汗を掻いたせいだろうか。 少女の制服が透けて、キャミソールとブラジャーの紐のラインが浮かんでいた。 男はバツが悪そうに目を逸らして、遠くまで真っ青な空を見上げた。 この繰り返す日々はどこへ行くの? 私はこのまま……。 桜が咲いてる。ここから眺める桜はいつも同じ。いつも綺麗。いつもヒトから愛されてる。 あぁ、あの桜の下で眠りたい。 咲き乱れ、散っていく、桜。また来年には綺麗な花を咲かせる桜。 私は? 微かに感じるこの温もり。この温もりをいつまで感じていられる? 忘れないで。 恐い。恐いよ。誰もいない世界が。誰も私のことを覚えていない世界が。 お願い。 手を握っていて。消えそうな私を繋ぎ止めて。 明日も来てくれるよね? 一人はイヤ。 一人はイヤなの。 闇が恐い。 後ろから近づいてくる闇が恐いの。 ねぇ、明日も来てくれるよね? この手を握ってくれるヒトが。いつも変わらぬ桜が。私を繋ぎ止めるすべて。 もう何もない私の世界。 もう何もない私の世界。 あぁ……あの桜の下で静かに眠りたい。 この繰り返す痛みはドコから来るのか。俺はこのまま……。 今年も桜が咲いた。美しく咲き乱れる桜。変わらぬ自分。憎しみに似た羨望。 あの桜……来年も咲くんだろうな。 変わりなく咲き、散っていく、生命の輪。緩やかに、だが確実に流れる、時。 俺は? なぜここにいる? 握り締めるこの手にどれほどの意味があるのか。 微かに感じるこの温もり。微かだが、確実に感じるこの温もり。 恐い。どうしようもなく、恐い。君を忘れてしまうことが。君のいなくなってしまった世界が。 ごめん。 たとえ苦しみしか感じなくとも。君に生きていて欲しいと願う俺を、許してくれ。 明日も来ていいかな? 生きていてくれ。 君の手を握っていたいんだ。 朝が恐い。 一人で迎える朝が恐いんだ。 なぁ、明日も来ていいかな? この握り締める手が。この温もりを感じることだけが、今の俺に出来ること。 もう何も出来ない自分。 もう何も出来ない自分。 あぁ、またあの桜が咲いてる……。 希望。 それは最後の望み。 叶えたいモノ。 行き着くべき場所。 それは悦ぶべきコト。 楽しむべき瞬間。 すべてのヒトへ この悦びを伝えよう。 それは終末の感覚。 終わりへの憧憬。 運命への反抗。 自分が広がっていく感覚。 溢れ出る生命。 湧き起こる悦びの感情。 死。 甘美なる終焉。 その瞬間を待ちわびる自分。 死。 その悦びをすべてのヒトへ。 そして僕も……
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